前置き
会社に努めている方で、「独立」や「副業による事業」などに興味をもち、法人=合同会社を設立しようと考えられた方が対象となります
私が合同会社を設立した際の手順や、事前に把握していればよかったことや、そもそもの法人化のメリット・デメリットなどを可能な限りわかりやすく説明させていただきます。
これから法人を設立しようと検討されている方の力に少しでもお役に立てれば幸いです。
法人化のメリット・デメリットとは?
合同会社設立の手順に入る前に、法人化のメリット・デメリット、個人で資産を運用される方におすすめな「資産運用会社」について、最後に法人設立にあたっての設立費用についてご説明します。
法人化のメリットはずばり「節税」
法人化する際に特に効果の高い「所得税」について解説します。
※参考:国税庁「税の学習コーナー」「NO.5759法人税の税率」
所得税は、個人(法人)の所得(収入から経費などを差し引いたもの)に対してかかる税金です。また所得が多くなるほど税率が高くなります。
ここで、所得に対する税率が個人>法人の方が低く抑えられている。つまり、同じ所得を得るなら法人にしたほうが節税できる!というわけです。
例として、年間500万円の所得を得たとします。
項目 |
個人 |
法人 |
所得(課税所得) |
500万 |
500万 |
税率 |
20% |
15% |
課税額 |
100万 |
75万 |
税率は法人であれば、課税所得年800万円以下まで15%であり、年800万超の部分は23.30%である。
上記の例を見て分かる通り、同じ所得を得る場合、法人の方が25万もの節税効果が得られます。このため、個人で資産を運用する場合、法人化する選択肢が大いにあると言えます。
法人化によるデメリット
法人化によるデメリットとして、ランニングコストが挙げられます。代表的なものとしては住民税(均等割)になります。これはたとえ所得が無い(赤字)状態であっても払わなければならないものです。
(均等割)
均等割額 = 税率 × 事業所等を有していた月数 ÷ 12
(例)
資本金額が1千万円以下の場合で且つ市内従業員数50人以下の場合の税率は50,000円。
つまり50,000円は確実に発生するランニングコストになります。
※こちらは市町村によって計算式・税率が異なるため、各市町村にご確認ください。
資産管理会社とは個人の資産運営に特化した法人
不動産資産等、個人で資産を保有しそれを利用して資産形成を行う過程で「資産管理会社」という言葉を聞いたことがあるかと思います。読んで字のごとく【資産」を「管理」することに特化した会社であり、法人化することで税制面での優遇があります。
資産管理会社の詳細については以下のHPが参考になるかと思います
https://fudousan-kyokasho.com/asset-management-company-9610
法人には大きく2種類ある
法人には大きく「株式会社」と「合同会社」の2つの形態があります。
「合同会社」は「有限会社」に変わる法人形態であり、主に、家族経営や個人経営など小規模事業向けの会社形態の位置づけです。
なぜ、個人で不動産等資産を運営する場合、法人化がおすすめなのか。以下のコスト・税制の2つの側面から解説します。
株式会社と合同会社の比較
合同会社は設立・維持コストが安い代わりに対外的な信用度が株式会社ほど高くない、また節税効果も株式会社に劣るというのが一般的です。
マトリクスにすると以下の通りです。
個人 |
合同会社 |
株式会社 |
|
設立コスト |
設立、管理コストは低い |
対外信用度は株式会社に劣るものの、節税効果は高く、設立・管理コストが安い |
対外信用度が高い分、設立、管理コストも高い |
節税効果 |
節税効果が低い |
節税効果が高い |
節税効果がより高い |
合同会社の設立費用はいくらなのか?
合同会社の設立に必要な最低限の費用は約62,000円です。これに、設立代行業者の利用や、紙の定款に貼る収入印紙代が加わります。私は設立の際に代行会社を利用ました。
私の設立に伴う費用はおおよそ以下となります。
項目 |
費用 |
備考 |
代行業者費用 |
4,680円 |
システム利用料790円 電子約款作成代行料3,890円 |
登録免許税 |
60,000円 |
法務局で印紙を購入します |
代表印(実印/銀行印/角印) |
7,980円 |
代行業者にて購入手配しました。 |
印鑑証明書 |
300円 |
代表社員(個人)の印鑑証明書 |
印刷代 |
1,000円 |
各種申請書の印刷 |
合計 |
73,960円 |
設立時に必要な費用の合計 |
仮に、株式会社を設立していた場合、費用は以下になると考えられます。
項目 |
費用 |
備考 |
代行業者費用 |
4,680円 |
システム利用料790円 電子約款作成代行料3,890円 |
登録免許税 |
150,000円 |
法務局で印紙を購入します |
定款認証 |
50,000円 |
公証人に対する定款の認証手数料 |
代表印(実印/銀行印/角印) |
7,980円 |
代行業者にて購入手配しました。 |
印鑑証明書 |
300円 |
代表社員(個人)の印鑑証明書 |
印刷代 |
1,000円 |
各種申請書の印刷 |
合計 |
213,960円 |
設立時に必要とな費用合計 |
合計金額を比較しても 株式会社は213,960円に対し、合同会社は73,660円と▲140,000円も合同会社のほうが安く設立できます。
大手でも合同会社へ変更している
話はそれますが以下の様な大会社でも合同会社化する動きが見られてますので、今後合同会社の認知度はますます増えていくものと考えられます。
- Google合同会社 (2016年に合同会社化)
- アマゾンジャパン合同会社(2016年に合同会社化)
- Apple Japan合同会社※日本法人(2011年に合同会社化)
(いずれも2020年4月現在)
株式会社に比べて合同会社の組織体系がシンプルであり、株式会社は大会社(資本金5億円以上又は負債200億円以上)に必要な「取締役」と「代表取締役」、「監査役」、「会計監査人」が不要となったり、会計監査人が必要なくなるので監査のコストを抑えらるなどのメリットがあるからと推測されます。
合同会社を設立しよう!
法人化のメリット・デメリットについていかがでしたでしょうか?いよいよ合同会社設立の手順に入ります。
一番最初に検討すべきは設立代行業者を使うかどうか?
間違いなく利用すべきと考えます。設立代行業者は書類作成までの代行と登記までワンストップで代行してくれる2種のサービスがありました。
書類作成も行政書士が作成してくれるということでコスパは良いと考えます。
大きく2種類のサービスがあり、1つ目が「書類作成代行」と「書類作成+登記等の作業代行」があります。「書類作成+登記等の作業代行」は作成した書類を法務局へ提出することまで代行してもらえます。
登記登録が可能な法務局は限られておりますので事前に、法務局のホームページから、地域の登記登録が可能な法務局を確認しあまりに遠いようなら代行してもらうのも良いかと思います。
代行サービスの概要 |
設立代行業者の利用 |
個人 |
定款の作成 |
◯ |
ー |
各書類のサンプル提示 |
◯ |
ー |
登記作業 |
◯ |
ー |
事前に抑えるポイントをチェック!
私自身が実際に合同会社を設立した経験から、事前に押さえておいたほうが良い知識、資料と、設立時に決めて置かなければいけない事柄について説明します。
法人設立に必要な資料とは?
設立に必要な書類は以下となります。また、すべて自分で作成する方法と、設立代行業者を利用する方法があります。
(※)はいずれも設立代行業者が作成。
資料の詳細な説明・フォーマットは法務局のHPをご確認ください。http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/COMMERCE_11-1.html#3-1)
1 |
合同会社登記申請書(※) |
商号、本店、登記事由、資本金、登録免許税等を記載 |
添付書類 定款、2,3、4 |
2 |
本店所在地決議書(※) |
設立する法人の本店所在地と社員(出資のみの場合も有限責任社員として連盟必要) |
※ |
3 |
就任承諾書(※) |
業務執行社員および代表者印に専任されたことを承諾する資料 |
※ |
4 |
振り込みがあったことの証明書(※) |
資本金の振り込みがあったことを示す証明書。 |
※ |
5 |
振込明細書 |
代表社員の口座でなくてよい。定款に記載の出資者全員分の名義で、振り込みを行ったことが確認できること。 |
インターネットバンキングの振り込み明細を印刷し利用。 |
6 |
代表者印・銀行印・角印(※) |
法人専用の印鑑です。 |
届くまでに時間がかかりますので商号が決まり次第、手配が必要です。 |
7 |
印鑑証明書 |
代表社員の印鑑証明書 |
事前に市役所等で印鑑証明書の発行が必要 |
※法務局HPにはフォーマットがないためフリーと思われる。
マトリクスをご覧になられても分かる通り、非常に手間と神経を使う作業になります。
おすすめは、設立代行業者に委託するのが良いと考えます。私が利用した設立代行業者ではこれらの書類作成の代行に加えて、提出物の捺印・割り印の丁寧な説明もありましたのでご検討ください。
法人設立前に考慮/決定しておくこと
法人設立前に考慮/決定しておくこと法人の設立には無論「商号(法人名)」や代表社員を事前に決めておく必要があります。特に「商号(法人名)」については、同じ商号の法人があっても設立は可能ですが、無用なトラブルを避けるためにも、事前に重複・似たような商号を確認し、避けるほうが無難です。
法人の設立に最低限必要な項目の一覧です。一つずつ説明します。
- 会社の調整
- 家族の同意
- 登記に必要な事項
- 印鑑の用意
- 代表者の印鑑証明用意
- 資本金振込用銀行口座用意
- 法人用メールアドレス作成
- 資本金の振り込み
会社との調整
お勤め先の会社との調整を行う。副業申請などを確認する必要があります。
家族の同意
家族の同意は得る必要があると考えます。しっかり説明し納得してもらったほうが良いと考えます。
登記に必要な事項
登記に必要な事項として、以下について事前に合意・決定をしておきましょう。
商号(会社名)
事前に法務局の「オンライン登記情報検索」か国税庁の「法人番号公表サイト」から商号を検索し類似しているものを確認します。国税庁の「法人番号公表サイト」が事前ID登録がなく無料で使いやすかったです。合わせて、合同会社を前につけるか、あとに付けるかを決定します。(どちらかで不利益になることは無いようです)
事業目的
設立する法人が行う事業の目的から、適切な文言を検討します。例えば、投資信託などの金融商品の投資業務を取り扱うような場合は、「各種金融商品に対する投資」などが、コンサルテイング業務を生業とするような場合は「各種コンサルティング業務」が該当すると考えられます。以下のような検索サイトで目的の文言を探し決定するのがおすすめです。
会社目的検索(定款・登記記載目的事例検索サービス)http://mokuteki.jp/「事業目的 - 会社設立完全ガイド」https://www.venture-support.biz/media/establishment/7274.html
所在地の決定法人を設立するに当たり、自宅以外に事務所を構える場合はそちらの住所となります。
資本金
設立時に必要な資本金額を決定します。借り入れではなく資本として金額を調達する場合は、資本金の変更として、登記事項の変更の手続きが必要になります。
- 社員は必ず出資が必要(1円以上)
- 資本金の変更は手続きが必要になる
社員及び出資額
合同会社では、株式会社であれば「CEO」や「代表取締役」に当たる人間を「代表社員」と言います。また、原則「出資者=社員」となり、「取締役員」「従業員」という様なくくりはありません。逆に言えば、社員になる方は必ず出資をしなければならないため、社員となる方で誰がいくら出資するか?の決定も必要です。また、1円の出資で代表社員となっていますので出資額は1円からでも問題ありません。
印鑑の用意
私は設立代行業者経由で「代表者印」「銀行印」「角印」のセット購入しました。届くまで1週間程度要することもあり、登記作業時点で必要になるため、商号が決定次第手配を進めたほうが良いです。
代表者の印鑑証明の用意
「代表社員」になる方の印鑑証明です。前項の法人の「代表者印」ではありません。
法人用メールアドレス作成
実際に登記には必要ありませんので登記後に行っても問題ありません。私は設立後の何かしらの手続きで必要になることを想定し用意しました。
資本金振込用銀行口座の用意
合同会社の社員(出資のみの方を含む)が出資を証明するための銀行口座を用意します。私は、代表社員である個人口座で行いましたが、代表社員である必要はありません。また、銀行の法人口座は、法人設立後、銀行が提示する条件を満たすことで開設可能となりますのでこの時点では不要です。
資本金の振り込み
前項に記載した銀行口座に社員の方の名義で出資額を振り込みます。このとき例えば「代表社員」の個人口座を利用した場合、「代表社員」の方の名義で振り込みが必要です。(自分の口座に自分で振り込む)
法人登記をしましょう
ここまで、合同会社の設立に必要な事項を説明しました。ここからは、設立に際し主に私の経験から実施した作業をご説明します。
設立代行業者に登録
契約した設立代行業者の案内に従い、これまでの手順で決定した事項について、登録していきます。設立代行業者を利用しない場合はご自身で法務局より所定のフォーマットをダウンロードし入力する必要があります。
各種資料の用意
設立代行業者が作成した各種書類と、自身で用意した書類を印刷します。自宅にプリンターがない場合は、コンビニのネットプリントがおすすめです。利用者登録無しにネットからの印刷予約が可能です。印刷した際に発行される領収書は少額であっても経費申請のために残しておくことをおすすめします。 また、印刷した書類には「代表者印」(法人の印鑑)所定の作法に従い捺印する必要がありますが、設立代行業者を利用することでこちらもサンプルを提供していただけるため、迷うことはありません。
法務局に登記の申請を行う
ご自身のお住まいを所管する法務局のうち「法人登記」が可能な本店・支店を事前に検索し、必要な書類を整えて提出します。もしくは登記申請はWebもしくは郵送で実施することが可能です。私の場合、事前に確認を怠ったため、実際に赴いて書類を提出しました。
登記完了のお知らせ
申請時に、その場で受付番号と登記完了予定日が記載された書類を渡されます。申請事項に不備がなければそのまま登記が完了しますが、法務局からの完了連絡はありません。自身で、登記完了予定日に国税庁の「法人番号公表サイト」を確認し、自身の法人があるかどうか確認しましょう。
まだ終わらない!設立後に必要な作業について
登記が完了=法人設立は完了です。ですが、まだ必要な作業は続きます。具体的には以下5つの作業を行う必要があります。
- 法人代表者印の印鑑カードを取得
- 全部事項証明書(登記簿謄本)の取得
- 税務署への必要書類提出
- 税務事務所への必要書類提出
- 市区町村役場への必要書類提出
印鑑カードを取得しよう!
法人代表者印(会社の印鑑)を印鑑登録し、印鑑カードを取得しましょう。印鑑カードがあれば煩わしい印鑑証明書の発行もスムーズです。また、印鑑証明はオンラインで取得することも可能です。詳しくは法務省のホームページをご確認ください。
法務省:オンラインによる登記事項証明書及び印鑑証明書の交付請求について(商業・法人関係)http://www.moj.go.jp/MINJI/minji71.html
全部事項証明書(登記簿謄本)を取得しよう
印鑑カードを取得する際に全部事項証明書も1部取得しましょう。税務署等への提出に必要となります。殆どの場合コピーして利用可能ですので部数は1部で問題ありません。また全部事項証明書の発行もオンラインから申請・郵送可能です。
管轄税務署へ必要書類の提出をしよう
国税に関する申請は「税務署」へ必要書類を提出する必要があります。注意点として、設立から2,3ヶ月以内の提出が必要であり、忘れずに提出する必要があります。詳しくは、設立した法人の管轄区域となる税務署のホームページと、ダウンロードした法人設立届出書を御覧ください。
- 法人設立届出書
- 青色申告書
- 定款
定款以外のフォーマットは国税庁のHPより入手してください。また手書きだと間違えた際に再度印刷する手間も発生するため、Micorosoft Office Wordをお持ちの方であれば、ダウンロードしたファイルをwordで修正可能な形式に変換し、パソコンで書類作成することもできます。詳しい書き方は別途説明予定です。
国税局:[手続名]内国普通法人等の設立の届出https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hojin/annai/1554_2.htm
税務事務所への必要書類の提出をしよう
都道府県税に関する申請は「税務事務所」へ必要書類を提出する必要があります。注意点として、設立から1、2ヶ月以内の提出が必要であり、忘れずに提出する必要があります。詳しくは、設立した法人の管轄区域となる都道府県のホームページとダウンロードした法人の設立等報告書を御覧ください。
- 法人の設立等報告書
- 定款
- 全部事項証明書
市区町村役場へ必要書類を提出しましょう
市町村の法人市民税に関する申請は各市町村の役場に必要ショルを提出する必要があります。注意点として、設立から1、2ヶ月以内の提出が必要であり、忘れずに提出する必要があります。詳しくは、市町村役場のホームページとダウンロードした法人んお設立等報告書を御覧ください。
- 法人の設立等報告書
- 定款
- 全部事項証明書
これで法人設立の手順は完了です!
いかがでしたでしょうか?かなり長くなってしまいましたが、合同会社の設立に際して、必要な手順とその流れは以上になりますので、設立のお役に立てば幸いです。
法人の設立はあくまでスタートラインとなりますので、あとは自分が設立した動機・夢にむかって突き進むだけです!皆様の理想・夢が叶うことを応援しております。
最後に。
なぜ設立しようと思ったか
知人に個人資産を運用し利益を上げるなら、資産管理会社として法人化すれば節税ができると、教えてもらったことがきっかけです。また、法人化に伴う設立手順や税制の基礎知識の習得は、良い経験値/自己研鑽になると考え、資産管理会社の設立に至りました。
合わせて読みたい
合同会社を設立後に、ふむがまず行ったほうがよいと思った手続きを記事にしております。ぜひご参考ください。
ディスクレーマー
当ブログに記載される情報は、記載者が個人として実際に合同会社を設立した際に経験したことを元に書かれており、記載されている書類名など可能な限り、法務局等のHPを参考に正しい名称を記載しております。内容誤りがありましたら発見次第修正させていただきます。
なお、本サイトは、法律、会計その他の専門的助言を提供するものではありません。法人の設立については、法務局等のホームページをご確認された上でよく検討しご自身の責任において設立いただけますようお願い申し上げます。